いってんもん工房
Art Studio 凛

『陶でサッカーボールが作れないだろうか・・・』
唐突な質問に どう応えていいのか しばし戸惑いました。だって・・・私は・・・

・・・思い返せばこの仕事を始める前、少しの期間ですが、陶芸教室に通っていました。
(Linkページも掲載しています『studio bacca』

てびねりでの制作、通ったのは2-3年位でしょうか・・・それから随分と経ちますが、未だに愛用しているコーヒーカップや小鉢・麺鉢がいくつかあります。

気持ちの大らかな先生なのをいいことに(!?)陶芸道具そっちのけ 彫刻刀に持ち替えて
形作った器の外も中も、好きなように彫りまくり 先生から「陶芸しに来てるというより『彫り』に来てるよね」と苦笑されていたものでした。

・・・おっと、話を元に戻して「サッカーボール」。相談者は以前わが家へ来訪時、写真右のコーヒーカップでコーヒーを飲んだ事があったのを思い出し、先ずは私に相談してみよう、と思ってくださったそうです。(他にも立派な陶芸家の知り合いがいるというのに。。。です。なんたる奇遇。)

よくよく話を聞いているうち、相談者本人の熱く強い思いがヒシヒシと伝わってきて、「なんとかその想いをカタチにしたい!うまくできるかわからないけど、やってみさせてください!」と答えていました。今思えば自分には材料も道具も技量も何もないのに、ちょっと軽率だったかもしれません。でもその想いからくる勢いと、ワガママを相談できる陶芸の先生がいることだけを頼りに・・・

・・・早速陶芸の先生に相談したみたところ かなりの難易度で覚悟が必要だけれど、最大限の協力をしていただけるとのお返事(感謝感謝感謝!)。粘土の提供と焼成、釉薬がけの場所提供などなど、涙涙のスタートです。作業はわが家にて行い、素焼き・釉薬がけ・本焼きをお願いすることになりました。

「難易度の高さ」といったら 当初「やってみよう、できるかもしれない」と感覚的に思っていたのとは比較にならないものでした。適宜、的確なアドバイスをくださった先生のお陰で少しずつカタチになっていく時、その根底にある「熱い想い」の威力を感じずにはいられませんでした。自分の手に何かがとり憑いているような気にまでなりました。

制作過程の前半は写真をとり忘れ(嗚呼・・・悔・・・余りに集中していたせいなのでしょう・・・)ここでご紹介できないのは残念ですが、先生のアドバイスを元に制作した過程を、簡単にご紹介させてください。
(成型にあたっては、依頼者と2人がかり(独りでは絶対無理!)で行いました


<工程1>
よくこねた粘土を麺棒で8mm厚 約400mm角の板状に伸ばす。
(厚みを均等にするために、8mm厚の板を両サイドに置き、その上を麺棒で転がしました)

<工程2>
1人が机の上にサッカーボール(実物!)をしっかり固定させ、ボールの周りに水に塗らせたガーゼを敷く。もう1人が<1>をサッカーボール+ガーゼの表面にあてがい、両手で優しく包み込むようにして半球型にしていく。隙間ないように押し詰めたり引き伸ばしたり調整しながら、生地を痛めないように(慌てるとヒビになったり粘土が重なってしまうので、ゆっくりゆっくり)・・・

ボールがゴミ箱に沈んでいるため、球の半分の線がわからない・・・汗汗・・・だいたいの見当をつけて余分をナイフで切り取る
→やっぱり切りすぎて、ひも状に伸ばした粘土を加え(ヒモ作りの要領)「ほぼ半球」にする。

<工程3>
型(サッカーボール)から外すため、まだ水分を含んで柔らかい状態の粘土を乾燥させる。
→ドライヤーを遠くから当てる(急激に完全に乾燥させるとヒビの原因に&後の工程にも響くため慎重に)

<工程4>
ゆっくり型から外し、内側にも同様にドライヤーを当てて「ある程度」カタチがくずれない程度に乾燥させる。

#これを2回繰り返し、半球2個の完成!

<工程5>
半球2つをくっつける作業。先生から、ここが重要とのアドバイスをいただく。きっちりくっついていないと焼成時の破裂の原因になるので。半球の接着部分につまようじでギザギザ傷をつけて凹凸部分を作り、そこに水で柔らかくした粘土を埋め込んでいく。1人が下半分にあたる半球をしっかり支えて持ち、もう1人が上半分にあたる半球をそーーーーーーーーっと乗せる。継ぎ目部分を指の腹でしっかり馴染ませ・・・
なんとか・・・
ボールの完成!

まるで粘土の塊!?砲丸!?・・・いえいえ、中は空洞なのです! なんと粘土3500g使用。大きな赤ん坊くらいの重さですね。

<工程6>
台座制作。球状のため転がらないよう、窪みをつけた台を制作。しっかりどっしりと支えるため、なんと粘土1kg使用。

<工程7>
ここからが「彫師(!?)の腕のみせどころ・・・三角刀と印刀を使いわけて、サッカーボールの柄付。五角形と六角形の組み合わせです。(ご存知でした?)依頼者の希望により文字やイラストなども適所に彫刻。

<工程8>
更なる希望として、開口部分を作って更に蓋をつけたい、と・・・
どうやって穴をあけようか、開閉できる蓋の仕様をどうしようか・・・

うーーーん、うーーーん。

切り取ってしまうと、蓋が球の中に落ちてしまうし、ストッパーの役目をする別粘土を取り付けるという手もあるけれど、薄かったりちっさかったり、取り付けが甘いと これまた焼成に耐えれるかが心配だし・・・

あーだこーだとみんなで知恵を出し合い・・・
そしてひらめく!うまくいくかどうかわからないけど、やってみよう!!・・・

うおーーー、できちゃいました。サッカーボールの柄を崩さず、柄の六角形を角度をつけて彫刻刀で彫りこみ、切り落としました。 そしてとうとう・・・

サッカーボール粘土の完成!

<工程9>
素焼き。
なんとかここまではたどり着き、ほっと一息つくも、先生から「焼成時のゆがみの可能性と万一亀裂が入る
ことは覚悟しといてね」という言葉に、「は、はいっ!」と 緊張感が戻り、想いを沢山詰め込んで、先生に
ゆだねました。特に台座の部分は、粘土の塊のため、万一塊の中に少しでも空気が残っていたら、爆発
の可能性もあるとのこと。ボールも同様。爆発の可能性を秘めた(まさに爆弾!)が いよいよ入釜・・・
素焼きは比較的低温(600〜700℃程度)で焼いた後、自然に冷めるのを待ちます。
約3日後、釜から出てきた姿に、感動の涙その1
あ゛〜〜。無事でよかった、、、が、率直な感想。安堵と感動の涙その2
あとは釉薬を塗って本焼きを残すのみ。でもでも、本焼きは約1300℃という高温。未だ未だ気が抜けません。

<工程10>
釉薬がけ(塗り)
色味を選び、筆で釉薬・絵の具等を塗り分ける。釉薬は焼いて始めて本当の色が出るので、塗った直後は「?」という感じでしたが、五角形・六角形の塗り分けによって、よりサッカーボールらしい姿になってきました。

塗った部分は釜の中の床面につけられない(薬が流れ落ちて、粘土と釜床がくっついてしまうので)ので、またここでみんなで知恵を出し合いました。検討の挙句、開口部分を底にし(若干だが切り落としている分、安定する)台座と蓋と本体の3点に分けて焼くことになりました。そうすることで、全面への塗装が可能になりました。

<工程11>
いよいよ最後の工程、本焼き
先生にまで緊張させてしまって申し訳ない気持ち。蓋の部分は 本体と蓋の縮み具合・変形具合によっては 現時点で噛みあっていても本焼き後にかみあわなくなる可能性もあること、素焼き時と同様、特に台座の部分は爆発の可能性があり、気が抜けないこと(最悪の場合、釜の中で破裂して、釜をも傷つけてしまう)
そんなリスクをおかしてまで、、、先生ゴメンナサイ、ありがとう、あああああ、とずっと念じていました。

もはや先生の経験と天に任せるのみ。2日2晩、寝つきが良くなかったです。苦笑

そして、悲願の完成!!!

蓋部分だけ、色を変えました。
釉薬の塗りムラが、使い込んだサッカーボールのような、いい風合いの仕上がりです。偶然の産物!感動の涙その3・・・

言葉に表せない熱い想いがこみあげると同時に きっと同じくここ数日、眠りの浅かったであろう依頼者の元へと 車を走らせました。

依頼者がご対面した時の表情を見た時、ここに至るまでの様々な想いが駆け巡り、この貴重な体験の意味をかみしめました


最後に。

今回、まるで自分の専門外のことを 「想いをカタチにするお手伝い」という持論と人脈だけを頼りに、勢い余って一歩を踏み出し、結果的に想像できなかった貴重な実体験をさせていただくことができたことを素直に嬉しく想い、そして奇跡に感謝します。

思えば何の実績・経験・自信も何もなくて ただただ熱い想いはずっと持続していて ゴールまで走りきった、という感じです。

陳腐な表現ですが、「想いは届く」ということ、「独りじゃ(でき)ない」ということ、「何かが繋がっている」ということ、何より
自分自身が 想いをカタチにすることを求めていることを 改めて痛感しました。

ここに改めて、この機会を与えられたことと、実現に協力していただいた皆様に感謝します。
ありがとうございました。

☆長々とした読みにくい文章に最後までおつきあい頂き、ありがとうございました!

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